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▲ベージュ色の砂浜が広がるビアリッツのグラン・プラージュ
©Pavlovsky |
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フランスで初めてチョコレートがもたらされた地は意外にも、パリから遠く離れたフランスの南西部、スペインとの国境地帯に位置するバスク地方の街、バイヨンヌといわれています。そして、そこからTGVで10分ほど西へ向かうと、大西洋に面した街ビアリッツに到着します。ここは、海岸の美しさに魅了されたナポレオン3世が、王妃ウージェニーのために華麗な離宮を建てた19世紀以来、王侯貴族の保養地として発展した地。現在も多くの人々がヴァカンスに訪れます。そんなフランス有数のビーチ・リゾートに、世界でも珍しいショコラのミュゼはありました。バスク地方らしい、白壁と木の梁が印象的な建物の中に一歩足を踏み入れれば、甘いチョコレートの香りがふわりと漂ってきます。 |
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| 2000年に開館したこのチョコレート博物館では、“チョコレートの親”であるカカオの植物学はもちろん、その起源やバスク地方に伝わる秘密のレシピまでを分かりやすく紹介しています。ミュゼの扉を開ければ、“甘く美味しい”逸話の数々に触れることができるでしょう。 |
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| ヨーロッパのお菓子というイメージの強いチョコレートですが、その起源はじつはアメリカ大陸にあります。1527年、アステカ王国(現在のメキシコ)を征服したスペインのコルテスは、マヤ時代からこの地に伝わる珍しい飲み物を故国に持ち帰りました。それはカカオの種子をすりつぶし、水やトウモロコシの粉を加えた栄養価の高い薬で、古くから“神々の飲み物”として珍重されていたもの。 |
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▲カカオの種子は紡錘形で長さ約20センチ。19世紀半ばに固形のチョコレートが作られるまでは、飲み物として親しまれていた。
©Le Musée du chocolat |
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| アステカの言葉で「チョコラトル(chocolatl)」と呼ばれたこの貴重な飲み物こそ、その後、ヨーロッパじゅうを席巻することになるチョコレートだったのです。 |
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| コルテスがもたらしたこの“異国の秘薬”は、またたく間にスペインの王宮で人気を博します。スペイン王は、その甘くほろ苦い飲み物に夢中になり、製造法は国内に秘匿されました。さらには約1世紀にわたってカカオ貿易は、スペインが独占。また、特権階級の人々だけが楽しめる高級嗜好品とするために、カカオには法外な税金まで課せられたといいます。しかし、密かにチョコレートが日常的に飲まれていた場所がありました。それはカトリックの修道院──。高い栄養価とかぐわしい香り、そして断食の際の滋養強壮薬として、修道士たちはチョコレートを愛飲していたのでした。 |
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▲ロココ美術の代表的な画家、フランソワ・ブーシェが描いた『朝食』(油彩、1793年、ルーヴル美術館蔵)。典型的なフランスのショコラティエールが描かれている。
©Photo RMN / Arnaudet / digitalfile by DNPAC
©Daniel Arnaudet |
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そのチョコレートがスペインからフランスへ正式にもたらされたのは、1615年、スペイン王フェリペ2世の娘、アンヌ・ドートリシュがルイ13世に輿入れをした際と一般にはいわれています。しかし、ピレネー山脈を隔ててスペインと国境を接するフランス・バスク地方のバイヨンヌでは、じつはそれより30年以上も前の1580年、すでにフランス初のチョコレート工場が誕生していました。バイヨンヌは、アドゥール川とその支流ニーヴ川の合流点に築かれた古い街。このフランス・バスク地方の中心都市は、古代ローマの時代から街道筋の町として栄えており、スペインから密かにカカオやチョコレート製法の技術が伝わっていたのです。山を越えてスペインから入った修道士によってもたらされたのかもしれません。 |
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| フランスに入ったチョコレートは、その後流行する軽妙洒脱なロココ趣味と結びつき、タバティーレ(嗅ぎタバコ入れ)や扇などと並ぶヨーロッパの貴族のステータス・シンボルとして、ひとつの文化にまで発展していきます。そしてシナモンのほのかな香りを放つバイヨンヌのチョコレートは最高級品として愛飲され、この地はヨーロッパのチョコレート産業の一翼を担う存在となりました。カカオを多く含む苦みの強いチョコレートは、今なお町の特産として名声を得ています。 |
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| 遠くアメリカ大陸で発見された褐色の飲み物は、フランスでチョコレート文化ともいえる優雅な花を咲かせました。ビアリッツのこのミュゼには、そんなチョコレートにまつわるたくさんの品々が展示されています。フランスで考案され、ロココ趣味の絵画にも多く描かれることになったショコラティエール(チョコレート沸かし)や年代ものの鋳型、製造機などの珍しい品々に加え、チョコレート職人シェルジュ・クジグ氏の手による彫刻作品までも見ることができます。 |
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▲カカオの粉砕機
©Le Musée du chocolat |
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| まさにアートとチョコレートの“結婚”というべきこの作品を目にした人は、きっとそのすばらしさに言葉を失うはず。どんな風に作ったのか?溶けてしまわないのか?さまざまな疑問がわいてくることでしょう。そんな秘密の数々もこのミュゼを訪れれば、分かるはずです。 |
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▲18世紀のショコラティエールのレプリカ
©Le Musée du chocolat |
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▲このミュゼのいちばんの楽しみは、チョコレートの試食
©Le Musée du chocolat |
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チョコレートの歴史に触れたあとは、バスク地方に伝わるチョコレートの試食が待っています。ほのかに甘い香りがサロンに漂い始めれば、濃厚なホット・チョコレートの登場です。純度の高いカカオを使ったあつあつのホット・チョコレートは、まさにバイヨンヌならではの伝統の味。館長、マダム・ペロンによるカカオの効能の話もまた、とても楽しくためになるものばかりです。フランスのチョコレート発祥の地にあるショコラのミュゼは、目と耳、そして舌までも楽しませてくれる極上の空間なのです。 |
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