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▲ジル・シャザル館長
©Asuka Abe |
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MMF
: 私は改装前のプティ・パレを知らないのですが、今回行った工事は主にどのようなものですか?
ジル・シャザル氏(以下GC) : 改装の第一の目的は、プティ・パレの建設当時の長所をすべて取り戻すことでした。プティ・パレは建物自体がひとつの芸術作品なのです。豊かなボリューム感、自然光、シャンゼリゼと中庭の眺め、そういったものを取り戻したいと思いました。建物の内側にも外側にも自然があり、それが現代の私たちの好みに合っています。 |
| 中庭はもともとありましたが、陥没して10年来立ち入り禁止になっており、あまり意味のない場所になっていました。改装後、皆さんに見ていただくのは、宮殿としてのプティ・パレの姿です。それほど大きくはありませんが、やはり宮殿(パレ)と呼ぶにふさわしいでしょう。プティ・パレはパリに完全な形で現存する非常に稀な1900年の建造物のひとつです。それから、プティ・パレは美術館ですから、もちろん所蔵品があります。 |
| 改装前は展示場所が非常に限られていたので、多くの作品をお見せすることはできませんでしたが、改装後、プティ・パレは本来の長所を取り戻しただけでなく5割も広くなりました。矛盾するようですが、建物を1900年の建設当時の状態に戻すと同時に、それを損なうことなく5割も広くなったのです。その秘密はというと、(プティ・パレの入り口は道路から一段上がったところにあるので)中庭は2階に位置していますが、その下にはなにもなかったのです。 |
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▲地階にあるギリシア・ローマ彫刻の展示室
©Asuka Abe |
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| ですから、その下を4階分掘り下げました。ホールのある地階、その下の階に空調整備室、その下の2階は絵画とオブジェの保管庫になっています。一般の方は入れませんが、天井の下にもう1階設け、新たに7000m2のスペースができました。かつては保管庫も事務所も地階にあったので、地階には一般の方は入れませんでした。スペースを増やし、ホール、カフェ、修復のアトリエ、ミュージアムショップ、デッサン保管室などの新しい施設をつくることで近代化を図ったわけです。 |
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▲自然光の差し込む展示室
©Asuka Abe |
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MMF:
展示の仕方はどのように変わりましたか?
GC: 以前は、中庭をぐるりと囲むように企画展のスペースがあり、その外側に常設展のスペースがありました。企画展と常設展の間が行き来できなかったので、プティ・パレに来た方は、企画展を一周し、常設展を見ずに帰ってしまいました。プティ・パレは、グラン・パレ同様、企画展会場として知られ、美術館としてはあまり知られていなかったのです。今回の改装で、(入り口から中庭へと抜ける)光の基軸が取り戻されたので、中央に中庭に面したカフェをつくり、シャンゼリゼ側に常設展を、セーヌ側に企画展を配置してはどうかと建築家が提案してくれました。 |
| 中庭の下を掘り下げ2階を増設したことで、以前は一般の方が入れなかった地階にコレクションを展示できるようになりました。以前は3000m2だった常設展のスペースが、現在では5000m2になったのです。 |
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MMF: 窓がずいぶん大きくて光がたくさん入りますが、
作品を展示する上で問題はありませんでしたか?
GC: 彫刻、モザイク、陶器を展示する際は自然光が入っても問題ありません。しかし、企画展の展示室にはそれ以外の作品を展示することもありますから、その場合は窓を覆わなければなりませんね。例えば、2007年秋にはレンブラント版画展を予定していますが、これは自然光のもとに展示するのは問題外でしょう。 |
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▲特別展「クエンティン・ブレイクとセーヌ河畔のお嬢さんたち」の会場
©Asuka Abe |
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MMF
:「クエンティン・ブレイクとセーヌ河畔のお嬢さんたち」の展覧会はどのように企画されたのですか?
GC : もともとのアイデアは私たちのものではありません。クエンティン・ブレイクはロンドンのナショナル・ギャラリーで同様の展覧会をしており、このアイデアがとても素晴らしく思えたので、私たちもブレイク氏に展覧会の企画を白紙委任することにしました。 |
| 「収蔵庫から好きな作品を選び、テーマを決めて、イラストを書いてください」とお願いしたのです。ブレイク氏は1900年の女性をテーマに展覧会を構成してくれました。私たちは、文化遺産は創造の源であるということを強調したかったし、またおもしろい面もあるということを伝えて、できるだけ多くの方に美術館に親しんでもらいたいと思ったのです。美術館は観客のためのものですが、なかには入りづらいと思ってらっしゃる方もいるでしょう。美術館に入っても、どう振る舞えばよいか分からず、展示物を見てもどう判断してよいか分からずに居心地の悪い思いをされる方もいらっしゃるかもしれません。この展覧会は観客の方にもっとリラックスしてもらえるように、ある種の教育的効果を考えたといってもいいかもしれません。確かに作品は尊重されねばなりませんが、だからといって近づき難いものであってはいけません。それに、クエンティン・ブレイク氏のイラストは、絵を描いてみたいという気持ちを大人に呼び起こしてくれるかもしれませんしね。とはいえ、鉛筆を用意して作品を掛けた白い壁に「ご自由に絵をお描きください」というところまではできませんでしたけれど。 |
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MMF: この展覧会をとても楽しく拝見しました。
GC: 作品の周りにイラストを描くなんてけしからんという人もいますよ。しかし、この展覧会の目的は、まさに作品をやたらに神聖視するのはやめましょうということなのです。展覧会を企画するということは同時に批判に身をさらすことでもありますから、批判があるのは仕方ありません。 |
MMF:
常設展は定期的に展示替えをするのですか?
GC: はい。修復に出すものもありますし、作品を貸したり借りたりすることもあるので、展示替えは必要です。しかし、もしそうでなくとも、観客の方々が何度来ても魅力を感じるように、収蔵庫の作品を出して見せたり、展示の仕方を変えたりする必要はあるでしょう。また来たいと思ってもらえるようにすることが大切です。 |
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▲開放的な雰囲気の常設展示
©Asuka Abe |
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▲プティ・パレのエントランス
©Christophe Fouin |
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MMF:
プティ・パレは、はじめから美術館にする予定で建てられたのですか?
GC: そうです。はじめから美術作品展示施設としてつくられました。1900年の万博の際に、既に展覧会場として使われ、このときは中世から18世紀のフランス美術を展示するという百科全書的な企画展が行われました。その後、パリ市の美術作品のコレクション展示施設となりました。パリ市はカルナヴァレ博物館という歴史系の博物館を持っていましたが、市立の美術館はまだありませんでした。プティ・パレ美術館は、最初のパリ市立美術館ということになります。その後、プティ・パレのコレクションをもとにパリ市立近代美術館ができました。 |
| フォーヴィスム、キュビスム以降の作品は、1950-1960年代にこの近代美術館に移譲されました。近代美術館ができたときに、美学上の本質的断絶を境に、具体的には第一次世界大戦以前、フォーヴィスム・キュビスム、簡単にいえばマティス・ピカソを境にコレクションを分けることになったのです。そのため、プティ・パレには1920年までのアカデミックな作品が残っています。 |
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MMF
: コレクションは主に寄贈によって形成されたのですね。
GC: そうです。パリ市も継続して作品を購入してきましたが、核となったのは寄贈作品です。まず古代ギリシアから17世紀オランダまでのデュテュイ・コレクション、18世紀フランス美術を中心とするテュック・コレクション、イコンはすべてカバル・コレクションで、これらが主に寄贈されたものです。それから少しは購入予算もありますので、作品を買っています。ピカソのキュビスム時代の作品や、マティスのフォーヴィスムの作品を買うのは私たちの予算では無理ですが、ヘレニズム期の素晴らしいテラコッタなら問題なく買えますから。 |
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▲デュテュイ・コレクションのひとつ、レンブラント『東洋風の衣装の自画像』
油彩 1631‐1633年
©Phototépue des Musées de la
Ville de Paris |
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MMF : プティ・パレ美術館は、パリのほかの美術館に対して
どのように位置づけられますか。
GC: まず、場所自体ですね。美術館としてつくられた場所自体が素晴らしいということです。周りを庭で囲まれていて、中庭もあり、装飾も素晴らしい。パリの当時の芸術作品を代表するものとして、訪れる価値のある素晴らしい建築物です。また、1880年から1914年というかなり限られた時代がコレクションの核となっており、ここに来ればフォーヴィスムとキュビスムを除き、この時代のあらゆる傾向の作品が見られます。アール・ヌーヴォー、パリ市庁舎を飾った4枚の壁画、社交界の人々を描いた肖像画、民衆絵画、印象派をはじめとする風景画、そして、マティス、ピカソ以前の近代絵画、つまりこの二人が影響を受けたゴーギャンとセザンヌ。建物とこれらの作品を合わせると、この時代の芸術のほぼ完全なヴィジョンを描くことができます。それから、ひとつの展示室に絵画、彫刻、工芸品を並べて展示し、展示室ひとつひとつが個性を放つと同時に、一時代の文化の総合的な様相を伝えています。 |
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MMF: 最後に、日本の観客にメッセージをいただけますか。
GC: 日本とフランスの交流を深めるために、私たちは定期的にプティ・パレのコレクションを日本で公開し、また日本美術をプティ・パレで展示するようにしています。例えば、2006年にプティ・パレのコレクションが日本で公開されますし、2008年には「禅」をテーマにした展覧会をプティ・パレで開催することになっています。
パリには美術館がたくさんありますが、シャンゼリゼの近くに来る機会がありましたら、ぜひプティ・パレ美術館に寄ってください。常設展は無料ですし、ふらっと立ち寄って、カフェでお茶を飲んだり、気軽に来ていただけるといいなと思います。 |
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インタビュー・
阿部明日香 |
2005年12月14日 プティ・パレ美術館にて
著者プロフィール:
東京大学およびパリ第一(パンテオン・ソルボンヌ)大学博士課程。
専門はフランス近代美術、特にその「受容」について研究中。 |
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▲美しく生まれ変わった中庭に面したドーム
©Christophe Fouin |
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プティ・パレの歴史を豊富なイラストと写真で紹介する豪華本「プティ・パレ〜1900年パリ万博が誇るその建築」のほか、展示室ごとの見どころを詳しく解説した英語版の公式ガイドブックなどの書籍をインフォメーション・センターにて閲覧いただけます。 |
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パリ市立プティ・パレ美術館内の見取り図入りのパンフレット(フランス語・英語)をインフォメーション・センターにてご用意しております。 |
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