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03.日本とアンリ・チェルヌスキ〜旅、コレクション、美術館〜 コンデ美術館−シャンティイ城 フォンテーヌブロー城美術館
フォンテーヌブロー城美術館
世界遺産 フォンテーヌブロー城 ムーラン氏に聞く フォンテーヌブロー城と修復 ムーラン氏に聞く 本当の「修復」の在り方
歴史的記念物主任建築家の仕事とは?
▲庭から見える城。水面に映える美しい姿。
© Lina Nakazawa
 私が歴史的記念物主任建築家になってから24年になりますが、8年前の1999年から、フォンテーヌブロー城の修復に携わっています。私の担当する地域はセーヌ・エ・マルヌ県とコルシカ島ですが、セーヌ・エ・マルヌ県はイル・ド・フランス地方の東半分、という建造物の極めて多い地方です。例えばパリのゴブラン製作所や、中世の街並みで知られるプロヴァン(Pvovins)も含まれています。
 一つの建造物の修復を行うには、その周辺をよく知る必要があります。フォンテーヌブローでの仕事を始める前に、この地方で50以上の現場に関わり、そこでありとあらゆる種類の建造物を目にし、調査しました。そのおかげで経験と幅広い視野を持つことができ、フォンテーヌブロー城の修復にも、それが非常に役立っています。
 私のチームは約15名で編成されています。建築家・修復家、秘書や会計担当者、古文書の専門研究者などがそのメンバーです。この15名のチームがフォンテーヌブロー宮殿美術館のチームと協力して仕事を進めています。
 
フォンテーヌブロー城とは?

 まずひと言で言うと、フォンテーヌブローは極めて複雑な城です。フランスのどこにも、800年の歴史をもつ王家の城は存在しません。800年の歴史があるということは、800年分の資料が存在し、800年分の装飾が重なり合っている、ということです。この城では、部屋によっては3つの装飾一式(絨毯やカーテンも含む)が同時に存在するところもあります。同じ部屋を3通りに飾りつけることができる、ということです。これは非常に貴重なものです。

▲皇后の寝室。ここの天井にはルイ14世の母、アンヌ・ドートリッシュ(Anne d'Autriche)の紋章が、寝台上にはルイ15世の妃、マリー・レクズィンスカ(Marie Leczinska)の紋章、寝台はマリー=アントワネット(Marie-Antoinette)のために作られたものと、フォンテーヌブロー城の複雑な歴史を物語るかのよう。
© Lina Nakazawa
▲中央にあるのはフランソワ1世の紋章。
© Lina Nakazawa
 ヴェルサイユ城にはヴェルサイユの物はほとんど何も残っていませんし、ルーヴルは宮殿として一度死に、美術館として生まれ変わりました。チュイルリー宮殿はもうありませんし、コンピエーニュ城はずい分小さい上に半分空です。シャンボール城も中には何もありません。中世から19世紀まで続く、長く継続的な歴史を持つのはフォンテーヌブローだけなのです。
ヴェルサイユには三代の歴史しかありません。(もちろん非常に美しく、大きな歴史的価値をもつ宮殿ですが)。フォンテーヌブロー城の難解さは1500年間のコレクションを持つヴァチカン美術館の複雑さに似ていると思います。

 この複雑な建造物に取り組むには、膨大な資料と向き合う必要があります。残念ながら美術史の研究はあまり助けにはなりません。というのは、実は美術史とは20世紀にドイツで生まれ、フランスでは第2次世界大戦中に始めての授業が行われた、という極めて新しい学問で、研究が我々の実際の必要に追いついていない、というのが現実です。
 例えば、ルイ14世はルイ14世様式の内装の中で暮らし、ルイ16世はルイ16世の、ナポレオンはアンピール様式(Style Empire)、と紋切り型の解説がよく行われています。

▲フランソワ1世がイタリアから呼び寄せた画家ロッソ・フィオレンティーノ(Rosso Fiorentino)のフレスコ画が一面を飾る、フランソワ1世の回廊。
© Lina Nakazawa
▲緑したたる木々にあふれた庭。
© Lina Nakazawa
 しかしそれはまったくのでたらめです!ナポレオンなどは、フォンテーヌブローには「アンティーク調」の家具を好んで置いていたのです。現在ルーヴルにあるブール象眼(Marqueterie Boulle)の箪笥(ナポレオンの時代より1世紀程前のもの)は、ナポレオンが古物商から買ったものです。彼にとってフォンテーヌブローは、ヴァロワ家(Les Valois)やブルボン家(Les Bourbons)からボナパルト家が受け継いだ城で、その長い歴史やそこに住んだ君主に敬意を払って装飾を行いました。
しかしそんなことはどこにも書かれていないのです。
 ルイ14世も同じです。王のお抱え建築家マンサール(Mansard)や造園師ル・ノートル(Le Nôtre)にルイ14世が注文したのは、「フォンテーヌブローらしい、ルネサンス風の」様式でした。それはルイ14世の時代には、すでにここは「歴史的建造物」と見なされていたからです。ですから、17世紀のマンサールの手が入った跡は一目ではまったく分かりません。彼が施したのは「マンサール」風の様式ではないからです。
 私たちの仕事には、先入観を捨て、建物が私たちに語りかける直の声によく耳を澄ますことが大切なのです。
 そして、今申し上げたようなこと、この城の複雑な様相を理解するには、ある程度の知識がどうしても必要になってきます。

 実はフォンテーヌブロー城の大きな問題のひとつに、来館者の受け入れが挙げられます。この城の様相や歴史があまりに複雑であるために、以前は、来館者はできるだけ少ない方がいい、という考えがあり、そのために現在の美術館の受け入れ態勢は理想的なものとは程遠いものです。しかし私はそうは思っていません。確かに知識がまったくなくてはこの城を理解することはできません。だからこそ、ここが教育の場になってほしいと願っているのです。ですから今では、いかに来館者が快適に見学できるか、という点に真剣に取り組んでいます。

▲舞踏の間。
© Lina Nakazawa

取材・文・写真:
中澤理奈(Lina Nakazawa)
著者プロフィール:
東京外国語大学フランス語学科卒業後、パリ第四(ソルボンヌ)大学で美術史を専攻。美術史学マスター課程修了。専門は18世紀、19世紀の工芸品およびコレクショニズム。

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フォンテーヌブロー城美術館
所在地
Château de Fontainebleau 77300 Fontainebleau
Tel
+33(0)1 60 71 50 70
URL
http://www.musee-chateau-fontainebleau.fr/
開館時間
城:
<4月-9月>9:30-18:00
<10月-3月>9:30-17:00
庭園:
<5月-9月>9:00-19:00
<11月-2月>9:00-17:00
<3月-4月、10月>9:00-18:00
休館日
火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
入館料
一般:12.5ユーロ(2名分ペアチケットは19ユーロ)
割引料金:11ユーロ(2名分ペアチケットは16ユーロ)

アクセス
パリ・リヨン(gare de Lyon)駅からフォンテーヌブロー・アヴォン(Fontainebleau-Avon)駅下車。駅からバスで約15分。


MMFで出会える フォンテーヌブロー城美術館
MMFインフォメーション・センターでは、フォンテーヌブロー城の見学ガイド(フランス語、日本語)をご覧いただけます。


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