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02.林忠正 〜日本におけるフランス美術コレクションの父〜宮崎克己(美術史家)
日本初の西洋美術 コレクターの誕生 運命を変えた パリの万国博覧会 画家との交流を深める フランスでの日々 拡大するコレクションと 美術館創設の夢 散逸した 林コレクションと 後継者たち
散逸した 林コレクションと 後継者たち  
泉屋博古館東京分館
▲モネ《モンソー公園》1876年
 林忠正の西洋美術コレクションは、版画を除いても200点以上ありましたが、実は彼の生前にはまとめて展示されることがありませんでした。印象派の作品のうち比較的地味なものが、日本の洋画家たちの団体である明治美術会に参考として出品されたり、帝室博物館に寄託されたりしていましたが、彼の生前に、ドガ、モネ、ピサロ、ルノワール、モリゾ、カサットなど今日の目からするともっとも重要な部分は、ほとんど日本人の目に触れることがありませんでした。林は病を得て1905年に帰国し、翌年東京で亡くなりますが、彼のコレクションは当時の日本のフランス美術理解からすると、あまりに新しかったのです。1913年に林コレクションの重要部分は、まとめてアメリカの競売に掛けられ散逸しました。その直前に、白樺派の若い芸術家・文筆家たちが林コレクションを見せてもらい、感激して何とか日本にとどめようとしたのですが、間に合いませんでした。  
 林が晩年に親密な交遊をもったモネの作品も、林が所有していたものは現在アメリカの美術館などに入っています。しかし、1890年代に外遊の途中でパリに寄った住友吉左衛門に林が斡旋したモネの2点、《サン=シメオン農場の道》と《モンソー公園》が現在、住友コレクションを収めた泉屋博古館東京分館に所蔵されています。
 結局、林忠正のフランス美術コレクションは、全貌を日本で見せないまま散逸してしまったのですが、その無念さは、やがて美術館建設運動を始めた白樺派や、一大コレクションを築く松方幸次郎、大原孫三郎ら次の世代に引き継がれたと考えられます。
 

著者プロフィール:宮崎克己(みやざき・かつみ)

美術史家。1952年に生まれる。石橋財団ブリヂストン美術館学芸課長・同副館長などを歴任。著書に『西洋絵画の到来−日本人を魅了したモネ、ルノワール、セザンヌなど』(日本経済新聞出版社)、『ルノワール−その芸術と青春』(六耀社)など、訳書に『セザンヌ』(岩波書店)などがある。

 
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